本年度は、まず、先進諸外国における犯罪被害者法制の現状を正確に把握する作業を中心に研究を行った。この点は、従前に収集・整理した関連文献・資料を駆使しつつ、不足分を補完する形で作業を進めた。具体的には、被害者「保護」の問題について被害者証人以外の場合も含めて整理し、さらに、「情報提供」、「参加」、「損害回復・救済」へと対象を拡大した。研究対象国としては、すでに検討を深めてきたドイツから始めた。その際には、被害者法制の現実の動きを刑事司法全体との関係に留意し把握した上で、わが国への示唆を得る作業を行った。併せて、アメリカ法についても、同様の検討に着手した。本年度の研究で特筆すべき点は、研究計画段階では予想していなかった早さで、わが国にも「被害者参加制度」および「損害賠償命令制度」を導入する立法作業(刑事訴訟法の改正等)が進捗し、2007年6月には国会で可決・成立したことである。これらが実施される事件は、まさしく(国民の司法参加制度としての)裁判員裁判対象事件とほぼ重なっているため、(1)これらの立法のあり方について考察を行うとともに、(2)これらと裁判員制度との関係についても検討を深めた。その際には、比較法的知見を参酌しつつ、わが国独自の刑事司法制度との関連を十分考慮した上で、全体としてバランスのとれた法制度のあり方を考案・提言するように努めた。
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