本年度は、主に、前年度までの成果を踏まえて研究成果の取りまとめに従事した。具体的には、(1)諸外国の犯罪被害者法制について分析・検討した結果を整理し、わが国の法解釈・運用・立法(法整備)への示唆を抽出した。また、(2)これと対比する形で、わが国の解釈論・運用論・立法論につき包括的に再考察を加えるとともに、(3)わが国の従来の実態調査や新たに行った聞取り調査の結果等を集約し、わが法の解釈・運用・制度上の特徴や検討課題・問題点を明らかにした。 他方で、本年度の大きな特徴として、(4)昨年度(2008年12月)から実施された被害者参加制度、損害賠償命令制度に加え、本年度(2009年5月)から裁判員制度の下での裁判員裁判が実際に施行されたため、模擬裁判だけでなく実際の裁判事例を踏まえた考察が必要となったことが挙げられる。裁判員裁判の多くの事案では被害者参加等が行われており、それに伴う検討課題・問題点も具体的・現実的なものとなった。そこで、上記(1)ないし(3)および実際の事例の分析・検討を踏まえ、わが国の被害者法制をめぐる解釈論・運用論・立法論のあるべき方向性を探究・提示するとともに、裁判員裁判における被害者法制整備の提言を取りまとめるように努めた。より具体的には、被害者参加人と被害者参加弁護士、検察官との間での意思疎通のあり方、被害者参加に伴う不当な重罰化のおそれの回避策、被告人の十全な防御権保障のための取組み、公判二分論的な運用のあり方などが重要な課題であり、本研究では、これらについても相応の検討・考察を試みた(これらの成果については、今後できるだけ早く公刊できるよう引き続き努力する)。
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