研究概要 |
本研究は,医療における子どもの自己決定権について,(1)自己決定権の成立の問題,(2)自己決定権の侵害に対する法的救済の問題,(3)必要な医療行為に関して,子の意思と親の意思とが異なる場合における子の自己決定権の確保をめぐる問題,の3つの検討を行うことを目的とする。この問題を検討する場合,例えば,宗教的信念に基づく輸血拒否や,未成年者の人工妊娠中絶において見られるように,自己決定権を有する子が,当該の医療行為の実施に対する説明を受けて同意を行う主体ではない,という点に特徴がある。即ち,未成年者の場合,当該の医療行為に対しては,親(場合によっては子も)が説明を受け,親が当該の子の法定代理人として,当該医療行為について同意を行うのが通例である。当該の医療行為に対する親の意思とそれに基づく同意が,子どもの意思又は,医療行為の必要性から社会的に認められる合理的意思とが一致する場合にはともかく,両者が一致しない場合には,子どもの自己決定権をどのように考えるべきなのか,その行使方法をいかにして法的に確保するのか,そして,当該権利を侵害された場合の法的救済方法をどうするか等,が問題となる。 そこで,研究実施者は,上記の研究目的及び問題意識の下に,平成19年度は,次年度実施の研究に向けての準備段階として,(1)この問題に関する法的状況を調査するために国内外の文献を収集し,その法的状況を整理すること,(2)子どもの自己決定権に関する意識を,アンケートによって調査するために,そのアンケート作成の準備作業を行うこと,の2つの作業を行った。アンケート項目の策定にあたっては,社会調査の専門家の指導を受けて,同じ家族である親と子を調査対象とし,家族構成、年収、職種、親の学歴等の項目を設けた上で,研究にかかわる調査の質問項目を設定した。後者の調査実施については,過去に同種の詳細なデータがほとんど見られない状況では,法的に妥当な解決を模索する上で,大いに参考となるものと思われる。
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