研究概要 |
調停のルール化のありようについて,家事調停,とくに離婚調停を対象として分析を試みた。離婚調停は,構造的に当事者間に不平等がみられ,かつ,子どもの利益(しばしば公益と呼ばれる)を保護する必要がある事件類型であり,対話型の調停モデルをどのように適用するかが深刻な問題となる。この点,対話型調停が主流である米国においても,調停人の積極的な関与が検討されている。これらの点を踏まえ,対話型調停を目指しながらも,公益ないし基本的人権にかかる事項について,合意の対象としない,あるいは,特別な扱いをするといったことが考えられる。 本年度のもう一つの主な研究対象は,EUのADR指令である。これまで英米法国におけるADR証拠法がconfidentialityの形で発展してきたが,その成果を採り入れつつ,大陸法にも適用し得るものとしてADR指令が制定された。今後,EU加盟国はこれを国内法化する義務を負う。そこで,その制定過程及び解釈基準を分析した。同司令では,最終的には,証拠能力の制限ではなく,守秘義務を定めるという方法が採用されており,その合理性と外延について明らかにした。
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