本年度は、未成年者の保護と公証人の役割について研究した。フランスでは、未成年者の保護には、2008年以降、裁判官の役割が重要視され、共同親権の行使で問題が生じた場合、裁判官が積極的に介入している。このような法改正の理論の姿とその是非をめぐって分析を試みた。21年度は主として、法改正を理解することに力を注いだ。それに加えて、フランスでの専門家とのヒアリングは大変有効であり、書物に書かれていない問題点も明らかになってきた。論文としては、未だまとっていないが、資料は集まりつつある。さらに分析を深めて、平成22年度には執筆の完成をめざす。 研究の意義としては、下記のことが考えられる。フランス法では、法理論としての共同親権の必然性と、両親が別々に住みながら親権を行使する難しさが次第に明らかになりつつある。いわゆる交互居所の問題である。子の福祉の名の下に、現実の家族では、教育方法の不一致、価値観の異なる教育(就寝時間の相違、テレビやゲームに対する考えの違いなど)が、父の家、母の家で明らかになり、そこを行き来する子への影響が懸念され始めている。共同親権の制度の下で生じつつある新しい問題である。このような問題を解決するにあたって、裁判官の役割が中心的なものとなりつつある。そのもとに、法曹ではないが心理カウンセラーの役割が高まっている。いかに介入し、子の福祉を実現するかについては、更なる分析が必要である。 本年度の研究の重要性は、わが国の共同親権への改正に向けての理論を提示する点にある。フランス法では、共同親権を早期にとりいれ、しかも嫡出という考え方を廃止している。日本法よりも、親権法や親子法に関する法改正が活発であり、改革が一歩進んでいる。この改正を分析することによって、新しい法理論が明らになるだけなく、わが国が共同親権を取り入れた場合に起こりうる社会的な問題も知ることができ、立法に示唆するところが多い。
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