本年度は、まず第一に、共同親権の法的問題を立法の過程ともに研究した。フランス法では、共同親権が採用されており、かつては、わが国と同様の制度であった国の法制度が、どのような社会的な要請のもとで、改正に向かっていったのかを中心にして、新しい立法の解釈を整理した。それと同時に、その立法が、社会で生かされているのかどうか、法の理念が社会で効率よく作用しているのかどうかも含めて、フランスで調査を行った。その一端として、トゥールーズ第一大学での、「法と危機」と題する学会に参加して、トゥールーズ第一大学のマリリン・ブルージュマン准教授と共同して、研究発表を行った。ブルージュマン准教授は、共同親権の法のあることから生じる社会的な問題を分析したのに対して、わが国の立法が遅々として進まない現状分析した。報告の後、法によって社会的正義の実現をいかに図るか、参加者とともに議論を行った。これらの成果が、フランスのLGDJ社から、単行本として出版される予定である。 第二、後見法に関しては、研究会での指導を行いつつ、自らの研究に生かしながら研究を行った。後見法に関しても、実定法的な問題点に加えて、担い手としての法曹の任務の検討が必要不可欠である。これが不十分であれば、法の理念は実現されにくいことが、日本法とフランス法の比較研究により実証された。 近年の家族法領域の改正では、法の理念の実現を図る、法曹、実務家の存在を確保たるものにしなければ、改正の意味が薄れることが、明らかになってきた。近く、これらの成果を、まとめて論文執筆を完成させるつもりである。
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