2008年度は、2007年度に実施したミュンヘンでの調査ならびにハンブルグでの調査のまとめと、検討を行ってきた。ミュンヘン調査では、少年局、家庭裁判所、少年援助の各種担体の調査ができたことから、それら各機関が独立ばらばらに少年福祉の活動に当たるのではなく、緊密な連携をとって活動していることが分かったが、調査の際の聞き取り資料、文書資料を突き合わせ、とくに少年局がキーステーションとなって、一方で司法を、また一方で民間の団体を積極的に結びつけていることがわかった。少年の福祉の確保は、親の離婚や親による虐待などさまざまな原因で危険にさらされる。そのような危険を回避するにあたって、親の権利を制限するという方向をとる前に、とりうるあらゆる手段を使って、子を家庭内で健全に育成する援助を与えるとうのがドイツの姿勢であり、各行政地区ではそれぞれに機関同士が連携のための取り決めを行い、互いの活動の限界を補いあっている。とくにミュンヘンの協定は詳細であり、その内容は報告書にまとめたとおりである。 なお、今回の調査研究を進める過程で、研究代表者岩志は、家庭裁判所手続きにおける子の意思の聴取、および子の意思の代弁人の制度について、最新の情報を論文として発表した。さらに、連携研究者高橋は、ハンブルグ調査で担当した、いわゆる「赤ちゃんポスト」の問題について論文を執筆した。 2008年度の研究は、当初から2007年の調査をまとめるというところにあり、我が国にはじめての新しい情報をもたらすことができたと考える。また、2008年9月に成立した新家事事件手続法についても十分とは言えないもののそれを踏まえた研究ができたと考える。
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