研究概要 |
本年度における本研究費に基づく研究活動は、昨年度から継続してきた日英米比較信託法研究を行っていた在外研究先である米国ボストン大学ロースクールにおいて開始した。本研究費に基づく具体的な研究活動としては、前記日英米比較研究に関する研究成果(Yutaka Hoshino, Meaning of the Theory of Trusts,英文約150頁、未定稿)が実質的に完成した2007年5月末以降における、日英米三国の知財信託に関する全般的な文献資料調査が主要なものであり、この調査自体は、2007年8月上旬に在外研究期間を終えて本務校に帰着した後も継続して行っている。但し、資料の範囲が広大であることと、比較研究のための理論的観点が未だ完全に絞り切れないことから、かかる調査に基づく研究成果が具体的に結実するのは、早くとも翌年度後半、場合によっては翌々年度にずれ込むことが予想され、鋭意努力のうえ研究を進行させることとしたい。 他方、本年度における具体的な研究成果としては、日本の知財信託における関係者間の法律構成に関して、従来前提とされてきた一般的な構成と異なり、知財の発明者を知財信託の受託者とすることにより、知財信託の実質的な成立時点や発明者と出資企業等との法律関係等について、より合理的かつ柔軟な解決を導くことができる旨を主張する、独立の論文を完成させた(星野豊「知財信託における発明者の地位」筑波法政44号85頁〜101頁(2008年2月))。現在のところ、この観点をさらに発展させて、知財信託が成立する前に、施設利用等の債権的権利関係を信託財産とする債権信託関係を予め成立させ、両信託関係を連続させることが理論上実務上可能であるかについて、具体的な検討を行っており、具体的な考察結果を、2008年6月末に開催される日本知財学会第6回学術研究発表会で報告するほか、関係雑誌等に論文を公表することを予定している。 翌年度については、上記の2方面からの研究をできる限り接近融合させるべく、さらに多角的な研究活動を心がけたい。また、本研究の拡張的成果としての、信託法全般に関する体系書の完成についても、可能な限り努力したい。
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