本年度も昨年度に引き続き、東京圏および関西圏を中心に大学図書館やシンクタンク等に出向き、関連の資料収集を行った。また、各種の研究会やワークショップ等に出席・参加した。例えば、2008年11月29日、早稲田大学・北海道大学グローバルCOEジョイント著作権シンポジウムにパネリストの一人として参加し、「著作権制度と競争政策」とのタイトルにて報告を行った。 交付申請書において今年度の研究実施計画として具体的には(1)知的財産権のライセンス、および、(2)通信と放送の融合、を挙げていた。(1)に関しては「特許研究」および「社会科学研究(徳島大学)」に、公取委の知的財産ガイドラインに焦点を当てた論文をそれぞれ公表した(前者は昨年度の研究成果でもある)。いずれも、研究上はもちろん、公取委の実務および企業に与える影響に鑑みれば重要な意味を持つ成果だと思われる。 また、(2)に関しても、「通信・放送の融合と著作権法上の放送事業者等のあり方」というタイトルの論文を公表した。同論文は、IPマルチキャスト放送に対応した著作権法の平成18年改正と、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が提唱している情報通信法に焦点を当て、通信と放送が融合し、インターネットが普及する時代における放送事業者の著作権法上の位置付け、あるいは著作隣接権制度の在り方について示唆を与えることを目的としたものである。同論文は著作物の流通促進というテーマを議論する際に、大きな役割を果たすものと考えることができる。
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