本年度も東京圏および関西圏を中心に、大学図書館やシンクタンク等に出向き、資料の収集を行った。また、各種の研究会やワークショップ等に出席・参加した。例えば、知的財産判例会(2010年7月2日、場所:大阪倶楽部)において、表題「アクセスコントロールと不正競争防止法-マジコン事件」の下、報告を行った。申請書の中で、本研究内容の具体的テーマの1つとして、アクセスコントロール技術による市場独占の問題を指摘していたが、本事件は当該問題に直接関連を有する重要な事件である。また、同究会(2011年2月4日、場所:大阪倶楽部)において「マイクロソフト非係争条項事件」が取り上げられた(報告者:厚谷襄児)。申請者はかつて同事件の評釈を執筆したごともあり、報告者や他の参加者とともに、知的財産権の行使と独占禁止法の適用を巡る諸問題について積極的な議論を行った。 今年度の具体的研究成果として、(1)「競争政策の実現と特許ライセンス契約の限界」、(2)「着うた提供事業における原盤権の利用許諾拒否と共同の取引拒絶」、(3)『経済法〔第5版〕』(法律文化社)を公表した(後記「11.研究発表」参照)。(1)日本工業所有権法学会(2009年9月12日、場所:神戸大学)の研究大会シンポジウム、「特許法における競争政策」の中で行った報告原稿に、当日の質疑応答内容や、その後に接した資料などを反映させ、加筆修正したものである。(2)は原盤権(著作隣接権)に関連して複数の事業者がランセンス拒絶を共同して行ったことが独占禁止法に当たるとの判断を東京高等裁判所が下した判決について分析・検討し、その意義を明らかにしたものである。さらに、(3)は経済法の教科書であるが、「知的財産権と独禁法」(第3章第3節)を担当し、「知的財産ガイドライン」(2007年)、同書第4版以降に出された審判決例、その他関連する動きなどを取り込んだ上で、分析・解説を行った。
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