本年度は、研究の第一年度として、現地における実際を把握することに重点を置いた。 そのため、モナシュ大学医学部の総合診断(General Practice)学と医療政策の教員からのヒアリングと、GPの実際を見聞するため、メルボルンでの調査を実施した。 その結果、以下の知見を得ることができた。 1.オーストラリアにおける医療保障は、GP制度を前提として構築されている。 2.国家財源の逼迫から私保険加入が推奨され、国民の50%くらいが加入している。 3.私保険とMedicare(公的保険=無料医療)のいずれを利用するかはGPの判断に委ねられている。 4.GPは患者の状態を多角的に把握している。 5.GPは医療訴訟を予防するために患者を教育している。 6.GPが専門医としてみとめられており、患者教育などを行う時間が保障されている。 7.GPの診察時間は基本単位が15分と設定されており、それ以下の時間では診療報酬が減額される。 また、患者への医学情報提供が国策として進められており、多くの専門家や関係者が参加することで、州単位でweb上の提供が進んでいることも知ることができたが、その活用は、患者が単独で完全につかいこなすことは困難であり、GPの患者教育によって、基礎的な知識を得ておくことが、その後の誤って知識による医師と患者の信頼関係の再構築を行うという手間が省け、医療効率として優れているということを、モナシュ大学医学部のJohn Murtaigh教授から聞くことができた。 近年の現状としては、防医療としてのプライマリ・ヘルス・ケアが国家予算の逼迫に伴って後退してきているがそれを補うものとしてGPが機能しているということ、GPが保障された時間を用いて患者との対話を行いカウンセリング的な機能をも地域で果たしていることなどを、診療所を訪問することで確認することができた。なお、GPを専門医として認めたのは1978年であり、登録制度して認められるようになったのは1989年と、比較的最近である。
|