研究課題/領域番号 |
19530093
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
牧原 出 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00238891)
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研究分担者 |
原 彬久 東京国際大学, 国際関係学部, 教授 (60129096)
天川 晃 放送大学, 教養学部, 教授 (10009813)
御厨 貴 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00092338)
宮城 大蔵 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (50350294)
伊藤 正次 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (40347258)
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キーワード | 岸信介 / 二大政党制 / 最高顧問会議 / 全方位平和外交 / 田中角栄 / 小選挙区制 |
研究概要 |
2008年度は、岸信介の日記について、研究会メンバーからの分析報告を行い、それにもとづいて討論をし、戦後政治とりわけ1970年代の日本政治についての理解を深めた。第1に、岸の政治構想なかんずく政党構想である。第2は自民党組織論である。第3は、岸内閣期の外交政策である。第1については、「何もしない善人より、何かをする悪人の方が何かの時に役に立つ」と述べたという岸は、自らが提携しうる政治勢力の幅が右から左へと極端に広かった。そこから見ると、国民運動を基礎とした保守新党、自動調整作用を持つ二大政党制、それに駆動力を与える小選挙区制という政治構想が戦後に一貫している点が特筆すべきである。第2については、日記から浮かび上がるのは、顧問会、長老会議、最高顧問会議で活発に発言・行動していた岸の姿である。特に佐藤内閣まで構築された統治の作法に拘泥しない田中が金脈問題で失脚し、逮捕・起訴される中で、従来の統治の作法を再建するには、長老政治家が動かざるを得ない。ここから岸は、長老会議を活用した福田内閣、顧問会を再編し最高顧問会議を設置した大平・鈴木内閣時代を経て、最高顧問として首相選定で積極的に発言し、首相外遊の前には外交に注文をつける存在となる。これらの会議で岸は福田と連携しつつ、福田・安倍晋太郎の首相推薦を行う一方で、田中角栄とのコミュニケーションを断たない位置に立ち、中曽根には改憲運動の担い手として期待を寄せ、激しく対立する派閥間の調停者の役割を担ったのである。第3については、岸の日記に台湾が頻出し、APU、APPUのような反共的色彩の強い国際議員連盟の活動に積極的であったこと、インドネシア軍関係者とも面会していたことなどが読み取れる。岸は、中国と距離をとり東南アジアに関心を向ける「全方位平和外交」を支える存在であった。
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