研究概要 |
本研究は、日仏伊三力国を対象に、公的金融機関が第二次大戦後から現代に至る政治秩序の形成と変容の過程においてどのような役割を果たしたのかを、中央地方関係のマクロの視点から体系的に比較分析することを目指し、仏伊の歴史的展開について実証研究を進めつつ、日本を含めた比較の視座の構築を試みた。実証研究については、19年度に公的金融機関の資金配分システムの分析を一応終えたため、第2の焦点である、地方自治体への資金配分が政党・政治家の地方ネットワークに及ぼした影響について各自が分析を進めた。フランス、イタリア双方の様々なケース・スタディを突き合わせた結果、資金配分のパタンと地元での事業遂行の枠組みの組み合わせによって、地元の党派ネットワークに与える長期的な影響は大きく異なってくることが明らかになった。こうした知見の妥当性を世に問うべく、08年のアメリカ政治学会で、中山を代表者とするセッション"City Hall,Local Investment Credits and Clientelism:Comparative Historical Allalysis of Local Party Dominance in Postwar France, Italy and Japan"を開催し、各自が英文ペーパー(伊藤は日本に関して杉之原真子の協力を仰ぎ共著となった)を報告した(もう一人の報告者として、フランスからRemi Lefebvre教授の参加を得た)。司会者(コーネルのRichard Bensel教授)、討論者(ハーヴァードのDaniel Ziblatt准教授)らから有益なコメントを得た。こうした実証分析の成果を踏まえ、以後、作業の重点を比較分析に移した。12月5日に双方の中間的な成果を持ち寄って検討会を開催し、現在、日仏伊3力国比較の視座から、地方への公的資金の配分パタンと、戦後の保守一党支配の構造や歴史的経路の間の相互作用をまとめた最終稿を準備中であり、完成次第、何らかの形で公刊を予定している。
|