政治的立場の相違に関してのデータ分析を、社会科学ではあまり使われていない多次元尺度法を用いて、行ったところ、1990年代初頭以降認知科学においては、殆ど行われなくなっていた、非ユークリッド空間の多次元尺度法モデルによって、政治的立場の相違の認知が、よりよく表現されることが確認された。これは、ユークリッド空間を用いてきた政治空間モデルにおいては、考えてこられなかった可能性を証明したことになる。またこれは、認知科学においては、幾何学モデルにおける非ユークリッド距離関数の重要性の証左となる。この過程において、非常に幸運なことに、東京で7月に行われた国際統計心理学会で、発表の機会を得るとともに、そこで、多次元尺度法モデル及び分析の第一人者であるPatrick Groenenと知り合い、方法及び分析手法について、直接コメントを受けることができた。その結果、手法の選択とともに分析の結果についても、既存研究に新たに貢献できる可能性がわかった。また10月には、イェール大学の認知科学者Marvin Chunに認知科学の幾何学モデルにおける位置づけについてコメントをもらい、その後の、社会科学、認知科学における、本研究の位置づけについての方向性が定まった。
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