2年間にわたる本研究では、昨年度の研究成果論文「戦後ドイツ国家形成と運邦主義言説」を受け、本年度は引き読きドイツ戦後連邦制の成立過程を解明するため、(1)連邦と州の権限関係の制度化をめぐる政党間の論議、(2)占領統治機構の形成過程、(3)州の設置と州の政治体形成、(4)「連邦制と政党の関係」および「比較連邦制」に関する研究動向の把握といった諸課題の解明を行った。 (1)については、連邦制形成過程の最も主要な争点の一つが権限関係問題であること、権限関係をめぐっては社会民主党の連邦優位論、キリスト教民主同盟の連邦・州均衡論、キリスト教社会同盟の州優位論が対抗関係にあったこと、アメリカは自国の連邦制をドイツのモデルにしたこと、政党間およびドイツ・連合国間の妥協の産物として「協調の連邦制」が創出さけたという仮説を考えた。(2)については、アメリカ占領地区とイギリス占領地区の統合により、占領統合機構が整備再編された結果、1949年後の連邦国家の原型が構築されたこと、こうしたプロト連邦制的枠組みの形成があってはじめて、そして同時代の連邦主義言説と相まって西ドイツにおける連邦体制が構築されたとの見通しを得た。(3)に関しては、ドイツ連邦国家が構築される以前に、その構成単位である州が事実上主権的単位として形成されたこと、こうした構成単位の結集体として戦後連邦制ができあがったこと、この意味ではドイツ連邦国家形成はも、ステパンやリンスの連邦国家形成の二つの型(結集型と統合型)のうち、前者に近似の過程であったことを明らかにした。 本年度の研究はまずは(1)から着手したが、単独の論文を書くには資料不足のため、(2)と(3)の作業に移り、また(4)の理論問題に取り組んだことから、本年度は論文を完成できなかった。 なお、総合政策学部の国際シンポジウムにあわせ、ドイツの連邦国家に関する研究者H.Wilms(ツェペリン大学)を招聘し、研究上の意見交換を行い、示唆を得た。
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