アメリカ合衆国における新社会科運動の知識(政治知識、知的技術)重視への反省として登場した地域「参加」重視の学校改革(学校生活の種々の相での決定事項への参加経験、政治集団内で演じられる多様な役割認識・仮想遂行・評価を通しての参加技術の開発を目指すところに特徴がある)の今日的意義を、その主唱者の一人である、Fred M.Newmann(university of Wisconsin)のアイディアを検討すると同時に、その種のアイディアを学校改革の実践の場で展開してきたボストン大都市圏の「教育機会のための大都市圏協議会(Metropolitan Council for Educational Opportunity)」、およびテキサス州を中心に活動するテキサス産業地域事業団(Texas Industrial Areas Foundation)の「提携学校(Alliance Schools)」の実験を検討することを通じ明らかにした。こうした作業を通じて、近隣コミュニティと学校(生徒・親・教師)の間に関係的なパワーとしての架橋型社会資本(bridging social capital)が構築・蓄積されることが、「良い学校(good school)の』実現・進展にとって重要であることが確認された。検討作業を通じて得た知見は、「子どもの貧困」をめぐる問題が深刻化し、地域社会と学校の関係の再構築が喫緊の課題となりつつある現代の日本社会にも一定の示唆を提供しうるものと考える。また、上述のような意味を持つ社会資本」については、学校組織を「脱連結的組織(decoupled organzation)」として捉えた、教育学者John W. MeyerとBrian Rowanの「教育組織の構造」論を検討することを通じて、政治的・社会的文脈に「埋め込まれた」市民教育の担い手たる学校組織の論理と生理を比較政治学的に、「信頼」論に結びつけつつ検討した。論説「社会資本、信頼と民主主義」は、そうした試みに一部である。
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