戦間期日本における「新自由主義」の潮流とその帰趨について、文献収集、資料調査及び分析を行った。特に初年度であるので、図書の購入、調査により資料の収集に努めた。まず政治経済学に関する文献と戦間期の日本、欧州の政治経済に関する文献を精力的に収集し、大阪大学図書館に収蔵した。また森川は、東京の文書館(国立国会図書館・国立公文書館・外務省外交史料館など)への2度の出張などによって一次資料の収集を行った。これにより第1次世界大戦期に浮上した通商問題の政治過程について調査を進め、外務省記録「欧州戦争ノ経済貿易ニ及ホス影響報告雑件」日本貿易協会の雑誌『貿易』や大日本紡績協会関係の調査などをおこなった。また1920年代に開催された国際経済会議、例えばでジェネバ国際経済会議(1922年)とジュネーブ国際経済会議(1927年)についても、外交資料館において調査をすすめた。瀧口は、上田貞次郎をはじめとしる新自由主義的潮流の文献資料や『大阪朝日』・『大阪毎日』など有力新聞の調査分析を行った。さらに井上準之助関係文書や自由通商運動を主導した財界人である平生〓三郎の日記の調査分析を進めた。またその研究成果の一部を、「民政党内閣と大阪財界 (一)」として発表した。政党内閣と経済的自由主義の担い手であった大阪財界との関係を本格的に扱った本格的業績としては、初めてのものである。 このほか、最新の研究に関する情報の交換を行うために、瀧口森川以外も参加する研究会を開き、民政党内閣と大阪財界、大正デモクラシーの政治経済学、「国民帝国」論の射程、ウイルソン外交などをテーマに戦間期の政治、外交、経済について報告・検討を行った。また必要に応じて外部の研究者(酒井一臣氏)を招き講演を依頼した。 以上により研究の十分でない戦間期の「新自由主義」を国際貿易・金融システムとの連関を視野に入れて実証的、政治経済学的に明らかにする試みが進捗した。
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