研究代表者の瀧口は、1920年代の「新自由主義」の潮流と政党政治の関係について、金解禁を実施する立憲民政党の浜口雄幸内閣期を中心に研究を進めた。研究分担者の森川は、第1次世界大戦期・大戦後の自由通商主義と日本外交の関係について、大戦期にイギリスやアメリカで採られた輸出入制限措置への対応に焦点を当てて研究を進めた。 本年度も昨年度に引き続き、上記のテーマに関する史料調査・収集、その読解・分析に力点を置いて研究活動を行っている。瀧口は、戦間期の日本で「新自由主義」の思潮が強かった関西(大阪・神戸)の公文書館・公立図書館・大学図書館で史料調査を行った。森川は、東京の外務省外交史料館と国立国会図書館に出張し、外務省記録や戦間期日本の経済団体の雑誌・文献の調査を手がけた。昨年度のロンドンのイギリス公文書館(National Archives)への海外出張調査では、瀧口が1920年代末、森川が第1次世界大戦期・1920年代初めの日英通商関係に関する史料を調査・収集したが、本年度はその整理と分析を進めている。また、2か月に1度の頻度で研究会を大阪大学で開催し、瀧口・森川が各々の研究の進捗状況を報告してきた。その際、戦間期の日本政治外交史や国際政治史を専門とする他の研究者も招いて討議を交わすことで本研究の深化を図った。 瀧口は研究成果の一部として、「大阪帝国大学設立の政治過程-大阪財界と浜口雄幸内閣-」(『阪大法学』第59巻第3・4号、平成21(2009)年、『ナショナリズムの時代精神』(共著、萌書房、2009年)74-96頁として発表した。また、瀧口と森川はともに、これまでに調査・収集した史料の総合的な分析を踏まえた研究成果報告書をまとめるとともに、雑誌論文・学会発表による研究成果の公表を行う準備をしている。
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