本年度は研究計画の2年目に当たるが、昨年度より産休・育児休暇を取得したため、7月1日に復帰以降は、研究計画初年度の残りを遂行した。昨年度中に審議会名簿のデータを収集し、若干の事例研究を開始しだが、今年度は事例研究をさらに深めた。とりわけ規制改革の推進母体(規制緩和小委員会、規制改革委員会)に焦点を当て、基礎資料の収集・整理につとめた。 明らかにしようとしたのは、いわゆる新自由主義に連なる考え方が、どの時点でどのような政策提言の形で提出されたのかということである。審議会の中間報告・最終報告等の文書を整理し、労働市場規制、福祉サービスの民営化・市場化、市場化テストに焦点を当てて、議論の推移および実際の政策変更プロセスに関する資料整理を行った。関連する既存の審議会と異なる見解が打ち出された場合は、その審議会の議論および管轄官庁からの反論も渉猟した。具体的に争点となっている点はなにか、なぜそれが争点として浮上しているのかについて、資料を通じて理解に努めた。 成果の一部は「ポスト・デモクラシーにおける合意と競争」という題目の論文にまとめ、日本政治学会における共通論題のパネルにて報告を行った。規制改革の推進母体が進める政策過程を「多数派支配型民主主義」を志向するものと規定し、既存の審議会における調整過程を「合意形成型民主主義」と捉えた上で、両者持つ政治的・民主主義的インプリケーションについて規範的な考察を行ったものである。今後とも、「多数派支配型民主主義」と「合意形成型民主主義」の枠組みを用いつつ、規制改革を通じて政策過程がどのように変質したのか、政策過程の変質は政策結果にどのような影響を及ぼしたのかについて、実証していくこととする。
|