本研究は、アメリカ合衆国における「反体制」思想の系譜、特に同時多発テロのブッシュ政権の政策を批判する市民運動を研究対象とし、その思想的意義について政治文化に関する理論パースペクティブにおいて議論するものである。3年計画の第2年度にあたる平成20年度においては、前年度におこなったアメリカ政治における「反体制」思想に関連する重要な理念的整理をさらに展開させた。その内容は平成20年度の日本政治学会研究大会における研究報告「政治理論における忠誠と倫理の組織化について」として発表した。その発表においてはアメリカ政治理論における忠誠と倫理の論じ方をフィランソロピーなどの事例と関連させて考察した。 そうした理論研究をもとに、合衆国における「体制批判」のイデオロギー的現況を研究するために、3月後半にアメリカにおいて実地調査をおこなった。まずニューヨークにおいではオバマ政権発足後のアメリカ政治のダイナミズムに関してりべラル派の研究者にインタビューした。またシカゴにおいてはThe Association for Asian Studies (AAS)の年次大会に参加し、多くの研究者と意見交換をおこなった。その際に中心的議題となったのはアメリカの政治体制を肯定する論理がどのように他国の政治体制を評価するときの基準となるのかという問題だった。この点は、アメリカ合衆国における「反体制」思想を総括する平成21年度の研究の中心的課題として継続的に考察する予定である。
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