本研究は、アメリカ合衆国における「反体制」思想の系譜、特に同時多発テロ以降のブッシュ政権の政策を批判する政治活動や市民政治的諸相を研究対象とし、その思想的意義について議論するものである。3年計画の最終年度にあたる平成21年度においては、前年度までの2年間におこなったアメリカ政治における「反体制」思想に関連する重要な理念的整理を整理、統合した。 初年度から2年度においては、アメリカの民主主義理論が「反体制」という観念をどのように精緻化してきたのかということを中心にしてきた。そこでさらに問題となるのは、政治権力、あるいは政府与党に対して複雑な様相を見せる具体的な政治運動のなかで、何が「反体制」として概念化されてきたのか、またそこに生じる政治文化的な特性とは何かということである。以上のような視点を追加して最終年度の本年は全体の論点を整理してきた。 そうした理論研究の成果を統合するに際して、最終的な草稿案に含まれるいくつかの論点に関してアメリカ合衆国の研究者から批判・批評を得るために訪米した。3月後半にフィラデルフィアで開催されたThe Association for Asian Studies(AAS)の年次大会の機会を利用して、多くの研究者と意見交換をおこなった。その際、政治文化理論が現実の市民政治のなかで果たす現状肯定的な機能が中心的議題となった。最終的な原稿においてはその点をさらに加筆した。その内容は『自己肯定するアメリカ』(ミネルヴァ書房)として刊行するため入稿済である。
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