平成22年は、第1に、2008年3月に行った生活クラブ生協の組合員を対象とする調査をNPO法人・参加システム研究所に委託し、2010年3月に行った。調査標本は864名であり、有効回収は283名(回収率32.8%)であった。このパネル調査における興味深い分析結果は次の3点である。(1)組合員活動は全体的に活性化しているかのように見えるが、「エッコロひろば」、環境活動、福祉活動の量は、所属年数が増えていくにつれて、むしろ微減していた。(2)組合員活動がソーシャル・キャピタルの醸成に及ぼすプラスの効果は大きくなかった。(3)生活クラブ生協の組合員活動とソーシャル・キャピタルとの善循環的な関係は強くなかった。その理由についてのさらなる分析は今後の課題である。上記のパネル調査の分析結果に関する概要(報告書)を作成し、生活クラブ生協・神奈川の理事会に送付した。 第2に、上記の調査結果をマクロ的な観点から捉えなおすために、神奈川県の市民社会におけるガバナンス構造の変化に焦点を絞った論文を発表した。この論文では、神奈川県の場合、愛知県や福井県と比べて、生活クラブ生協等のNPOセクターが町内会や経済団体等が中心となっている旧市民社会や行政に対して、相対的に自立・自律した「新しい公共」を構築していることを明らかにした。 第3に、生活クラブ生協の組合員活動と地域社会の相互扶助ネットワークとの関係を枠づける制度的変化に注目し、民主党政権の「新しい公共」という政策の中長期的な影響について考察した研究を韓国政治学会や慶應義塾大学の国際シンポジウムで発表した。 これまでの分析結果を踏まえた上で、NPOセクターにおける協働組合型の非営利組織と市民参加との相互作用のメカニズムについて、ミクロレベルとマクロレベルの分析結果を総合的にまとめ、本として発行していく予定である。
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