平成19年度の実施計画にそって、東ティモールとアチェの現地調査を行った。東ティモールは、本科研研究費補助金以外のプロジェクトを通じて、2007年4月の大統領選挙と6月の国民議会選挙時に現地を訪問した。さらにラモス・ホルタ大統領暗殺未遂事件後の2008年2月下旬にはNGOプロジェクトの視察を兼ねて現地調査を行った。東ティモールは現在2006年騒乱後の平和構築を進めている一方で、依然として紛争要因が解決されていない状況下にある。今後とも定点観測が必要である。今回、科研費補助金では、インドシナ紛争を経験し、今後東ティモールがASEAN加盟などで参考になるであろうラオスを訪問した。ラオスは農業国家として政治社会的に安定しており、一人当たりのGDPでは東ティモールとは変わらないものの、教育開発など社会開発分野において非常に参考になった。また、2008年2月上旬に、アチェを調査訪問した。アチェでは精力的にかつての紛争関係当事者などに聞き取り調査を行った。2005年8月のヘルシンキ和平(MoU)調印後の状況を知る上で有意義な調査であった。最後に、平成20年度のミンダナオ現地調査に向けて、2007年11月26日に政策研究大学院大学で開催された外務省招聘のミンダナオ紛争関係者との会合に出席した。具体的には、フィリピン政府、モロ・イスラム解放戦線(MILF)、地方議会、市民社会の各若手指導者らから情報収集を行った。平成19年度の研究を通じて、紛争要因が依然として潜行し、平和構築が遅々として進展しない東ティモールと、MoUが完全に履行されている状況下にはないものの、着実に平和構築が進展しているアチェとの対照的な政治社会状況を理解することができた。ぜひ平成20年度の研究にこの成果をつなげたい。
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