平成21年度科研研究は最終年度を意識して、事例対象紛争地域として未訪問であったフィリピンのミンダナオを訪問した。また、破綻国家から国家再建を行っているものの、依然として紛争状態が継続中のアフガニスタンを訪問した。 ミンダナオ紛争の紛争当事者は、政府・国軍対モロ民族解放戦線(MNLF)/モロ・イスラム解放戦線(MLLF)である。しかし広義でみれば、政府・国軍対共産党(CPP)/新人民軍(NPA)、アブサヤフ/ジェマー・イスラミヤ(テロリスト集団)、さらには地元有力-族間の闘争(Rido)もミンダナオ紛争に含まれる。 本研究での紛争当事者は政府・国軍対MNLF/MILFで考える。今回の訪問で両紛争当事者に直接聞き取りをすることは出来なかったものの、同紛争解決の国内アクターとして関与している市民社会組織(CSO)やNGOを訪問して、資料収集や聞き取り調査を行った。具体的には、ダバオ市ではクリスチャン系のCSOやNGOを訪問し、ムスリム・ミンダナオ自治区(ARMM)の本部があるコタバト市ではムスリム系のCSOやNGO、研究機関を訪問した。また、ミンダナオ・ムスリム地域はUNDPが指摘するように、フィリピン国内で最も厳しい貧困状況を強いられている。全国77州ある中でHDI(人間開発指数)は最下位に名を連ねている。貧困は紛争問題の重要な要因の一になっている。日本政府やJICAはバンサ・モロ開発庁(BDA)の支援を行い、平和構築支援を行っている。 アフガニスタンは反政府武装組織の攻撃で治安回復を第一義的課題にせざるを得ない地域と雇用創設や貧困撲滅に取り組む開発可能な地域に二層化されている。また、自然条件、食料の入手、第3者紛争仲裁者がいないことなど、当研究対象地域と比べると、アフガニスタンの紛争解決は依然として厳しいものと思われた。
|