本研究は、戦前から戦後の「知日派米国人」の日本に対する共通認識を解明しながら、彼らの戦前から戦後の日米関係に対する貢献を分析・解明する事例研究である。この事例研究を通じて今まで殆ど取り上げられていない日米関係の断面を描くこととなる。事例研究で分析対象となる人物は、戦前の現代日本政治研究の重鎮ケネス・コールグローブ(ノースウェスタン大学教授)、コールグローブの弟子チャールズ・B・ファーズ(戦時中は戦略情報局の対東アジア分析担当・心理作戦担当の責任者、戦後はロックフェラー財団の対東アジア文化交流責任者)、ファーズの大学院生時代からの友人で戦後ハーバード大学日本研究教授と駐日大使をつとめたエドウィン・O・ライシャワー、コールグローブの友人で戦前から戦後にかけて米国上院議員をつとめた「知日派」エルバート・トーマス、そしてトーマスの秘蔵っ子で戦後の日米経済関係と日系人権利回復運動の指導者マイク・マサオカである。平成19年度は、卜ーマス上院議員と日米関係について、2本の論文(1本は査読あり、もう1本は査読なし)を刊行することができた。これらの論文は、米国のアメリカ外交史学会年次大会で2007年6月に発表した内容と、翌月名古屋市の南山大学で開催された日米やアジアのアメリカ研究者が参加した国際会議で発表した内容を発展させたものであった。トーマスの文書についてはさらに調査が必要である。マサオカに関する資料調査とあわせて行っていきたい。ファーズおよび彼のロックフェラー財団での活動に関連する文書は、平成19年度中かなり収集することができた。卜ーマスとマサオカの関係を除き、トーマスが日米関係ではたした役割の概要は解明されたといえよう。
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