初年度は日本における人間の安全保障規範の受容プロセスを明らかにすることを中心にして、実証的な研究を行った。二年目にあたる20年度は、第一に、引き続き、日本における受容プロセスをフォローするとともに、第二に、アジア、北米など他地域における人間の安全保障の伝播と受容の解明にとりくんだ。 第一の課題については、文献調査をさらに進めると同時に、東京において国際協力機構(JICA)において人間の安全保障規範を導入し、実施のためのガイドラインとして作成した担当者、また、人間の安全保障のガイドラインについてJICA職員への理解促進を進める担当者などを始め、関係者への聞き取り調査を行った。これにより、政府の実施機関がいかに国際的規範を実践へと導入するのか、そのプロセスを明らかにすることができた。 第二の課題については、アジア、北米、また調査の過程であらためて重要性が明らかになったラテンアメリカ諸国との関係を中心に、文献調査を開始した。それと同時に、今回は、調査対象のアベイラビリティの関係から、タイに聞き取り調査をしぼりこみ、タイ外務省、在タイ日本大使館、在タイJICAなどにおいて、担当者から聞き取り調査を行うことができた。タイにおける調査を通じて、アジア諸国における受容プロセスの一例をさらに明らかにすることができると考えている。
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