国家権力は、一定の領域の内部で機能し、それを超えた権力の行使は外交と戦争という2つのチャネルを通じてなされてきた。しかし、権力が脱領域化し、2つのチャネルを経由しない権力行使の機能が垣間見られるようになっている。かつて帝国主義として正統ではないとされてきた権力行使の再来としてだけ論じるべき事象以上のものがあるとすれば、それは政治におけるグローバリゼーションの始まりであり、国家主権の大きな構造変動であると言える。ボスニア、コソヴォ、アフガニスタン、イラクの例に見られるような強制力の行使は、国家間の権力の相互作用の結果とだけ言えるものではなく、法制度上は国家権力の発動という外見を持ちながらも、脱領域的な権力の行使ととらえられるものであった。しかしながら、それは世界に新たな脅威をもたらしうる。コスモポリタニズムの再評価が求められているのは、こうした権力の脱領域化がもたらす暴力という脅威に対抗するためである。
|