第1に、分断国家としての韓国の対外政策の変化を、東北アジアのいくつかの3国間関係(トライアングル)というエリアにおいて、日本の対外政策の変化との比較という視点から考察し、論文発表した。そこでは、本研究課題が直接的かつ主要に論究されてはいないが、中国両岸関係と南北朝鮮関係の変化の異同が、それぞれの対外関係の変化の異同とどのような位置関係にあるのかを提示した。これはまた、韓国と台湾を直接的に比較したものではないとはいえ、東アジアの多国間関係において分断・分裂国家関係の力学が対外政策の変化にどのように反映するのかを説明する仮説の一部と位置づけられる。 第2に、韓国と台湾の民主化を前後する政治体制を比較考察する一視点として、政党構造の差異が一定の重要性を持つのではないかという問題意識から調査を続けている。両国の政治体制の移行の共通性の中での差異に着目すれば、台湾の「党国体制」に対して、韓国は「政府党体制」の失敗例と見ることができ、しかも、政党構造が短期に変わる韓国に対して、国民党と民進党の対立を軸にしつつも両党ともに相当な内部変化を経ている点などの重要な差異が注目される。本研究は両国の政治体制およびその変化の比較そのものが目的ではないが、対外行動における内政要因の論究はナショナリズム分析において小さくない意味をもつと考えられる。
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