同じ分断・分裂国家でありながらも、南北朝鮮関係と中国・台湾関係の何がどのように異なるのかという分析視点から、とりわけ冷戦後の対照的な展開過程を追跡した論文を発表した。 具体的には、南北朝鮮関係と中国・台湾関係は、ともに正統性対立ゆえに相互関係はもちろん主要な対外関係でも排他的な競争が支配してきたが、南北朝鮮関係の対称性に対して中国・台湾関係は非対称性に特徴づけられており、そのことが冷戦終結を挟んで二つの相互関係と対外関係の変化の差異を生み出したというのが研究の要旨である。 韓国と台湾の比較研究は政治学や経済学でも豊富にあるが、分断・分裂国家関係に着目したものは決して多くはなく、また、数少ない先行研究は国際体系要因を重視したものと、内政要因(アイデンティティなど)を重視したものに大きく類別される中で、本研究は分断・分裂国家の相互関係という中間レベルの要因を重視した点に意義があると思われる。 本研究は、相互関係の特徴を重視するとともに、それが国連との関係や主要な対外関係をどのように規定したかについても踏み込んで考察し、さらに、こうした相互関係と対外関係の対照的な変化が、韓国と台湾の内政上の対抗関係(さしあたり保守-革新)と、分断・分裂体認識の対抗関係(協力・併合、統一・独立)のねじれに関連するという論点を提起し、内政のアイデンティの差異の究明という次の考察課題を導き出している。
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