平成19年度は、スウェーデンがEEC加盟を政策の選択肢として議論した1960年代から、1995年にEU加盟を果たして12年が経過した現在までの、スウェーデンとヨーロッパ統合の関係を整理した上で、特に1970年代初頭にECへの完全加盟は行わないことを決定した国内政治を分析した。 1990年代半ばまでは、スウェーデンはECとの良好な経済的関係を模索し、1960年代から70年代初頭にかけてのEC加盟の是非に関する国内での議論の結果、加盟申請は見送られた。1995年のEU加盟後は、いかに加盟国としてEUに影響を及ぼすか、また自国に不利にならないEUレベルでの政策を実現するかが、課題となっている。スウェーデン政府はEUに対して、平和維持活動、環境保護、途上国援助、社会政策、男女平等、情報公開などの分野で積極的な働きかけを行っている。EUレベルでの政策に対して国内世論の支持が低い分野では、スウェーデン政府はEUにおいて積極的に行動を起こせない場合もあるが、さまざまな機会を利用しながら、EUの中での存在感とスウェーデンの目指す政策の実現を模索している。 1970年代初頭におけるスウェーデンのEC非加盟という決定で重要な点は、政府が中立政策と加盟は両立しないという政治的判断を下したことであった。この時期は、まだ国際化は一部の経済分野に限られており、将来的には国家主権の一部を放棄する可能性を伴うECへの加盟という政策が選択されることはなかった。国内政治の分析によって、EC加盟申請を強行することでスウェーデンの中立政策に関して各党間で激しい議論を戦わせることや、従来の中立政策のあり方を大きく変更することは、1970年代初頭の時点では国内のどの政治的アクターにとっても選択肢ではなかったことが明らかになった。
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