本研究は、米国とムスリムと社会の関係が今後の21世紀の国際関係の展開において極めて重要な位置を占めるであろうとの認識に基づき、米国内ムスリム市民の政治的志向および政治行動に注目し、これらが米国の対外政策、特に対中東・イスラーム地域政策にどのような影響を与えているのかについて分析するものである 本研究において最も重要な題材となるのが、2008年の米国大統領選挙である。大統領選挙期間は米国内が最も「政治化」される時期であり、国内諸勢力・諸派の政治的志向と政治行動が最も顕著に表出される時期でもある。また米国で年々政治的影響力を増している米国内ムスリム市民の動向は大統領選挙の結果に少なからず影響を与えるものと予測される。このように、この時期の米国内ムスリムの動向をリアルタイムで追跡することにより収集・蓄積された実証的なデータは、来るべき米国新政権の国内外のイスラーム社会に対する諸政策を評価するひとつの重要な指標となるであろう。 平成19年度には、研究に関連する文献の収集と情報整理、高速ネットワーク接続が可能なパソコン使用によるウェブ上で入手可能なデータの収集と整理、在米研究者あるいは研究機関からの資料・情報提供の依頼、予備的な訪問調査を行う。平成20年度には、引き続き、パソコン使用によるデータ収集と整理、現地調査による資料・情報の収集、在米研究者からのヒアリングおよび研究機関への訪問を行う。平成21年度には、これまでの作業に加えて、大統領選挙の結果に対するムスリム諸組織の反応と今後の対応を主たる調査対象とする。最終年度となる平成22年度には、収集した資料・情報の分析と、これに基づいた研究論文の執筆、研究論文の投稿、学会または研究会での口頭発表、および在米研究者との意見交換、研究成果に対するコメント・批判などフィードバックを取り入れた再検討・再考察、最終的な研究成果のとりまとめをおこなう。
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