本研究の目的は1969年~71年の日米繊維交渉において、佐藤栄作総理の密使を務めた若泉敬が果たした役割、それと同時に、若泉-キッシンジャー(ニクソン大統領の大統領補佐官)・チャネルでさまざまな解決策を模索する過程を明らかにし、日米繊維交渉の全容を解明することであった。この目的にしたがい、これまで収集した資料を中心として、実証的な分析を行なった。 とくに、今年度の研究においては、日米繊維交渉の前哨戦ともいうべき、日米綿製品交渉についての分析を行なった。同交渉過程は、これまでほとんど明らかにされておらず、日米繊維交渉への教訓を多々含んでいたものである。この分析を通して、米側の出方に対する日本側の判断の甘さが明らかとなった。 日米繊維交渉に関しては、1970年10月の第二回佐藤-ニクソン会談、それに続く、11月~12月にかけての11回におよぶ牛場-フラニガン会談の分析を行なうと同時に、若泉-キッシンジャー・チャネルによる交渉への関与も明らかにした。 本年度は、本科研費による研究の最終年度であり、これまでの研究を総合的に分析しなおし、「若泉敬と日米繊維交渉」という論文にした。同論文は、平成22年3月、東海大学より博士(政治学)の学位を授与された。
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