本研究は、1969年から71年にかけ、日本から米国への毛と化合繊の輸出自主規制をめぐる日米繊維交渉のうち、交渉の体をなしていた69年・70年を取り上げ、公式および裏チャネルでの交渉を分析し、同交渉過程の全容解明を目的とした実証的外交史研究である。この研究の意義は、佐藤榮作総理の密使として活躍した若泉敬元京都産業大学教授と、リチャード・ニクソン大統領の下、国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めていたヘンリー・キッシンジャーとの裏チャネルの交渉過程を解明したことにある。通常、こうした交渉過程が表に出ることはなく、日米繊維交渉は、日本の外交史上、裏チャネルの交渉過程が資料により裏付けられたきわめて異例、かつ、稀有な事例である。
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