研究概要 |
北朝鮮帰還事業に関して,第一に,外務省に情報開示請求を行い,同事業に関する多くの機密文書の開示を受けた。これにより,同事業の開始前,1950年代から1960年代にかけての同事業の継続(カルカッタ協定の延長)の日本政府内の意思決定過程及び日朝間での交渉過程が明らかとなった。また,1970年代初頭,日本人妻による脱北未遂事件があったことを公文書において確認した。この文書資料に対し,当時,帰還事業に関与した在日コリアン二名に対するヒアリングを実施し,朝鮮総連側の活動の末端において,所謂,帰国運動がどのように行われていたかを聞くことができた。また,帰還事業で北朝鮮に帰還し,その後,2000年以降,脱北し,日本に再び帰ってきた人5名にヒアリングを行うことができた。このヒアリングにより,当時の実際の帰還事業への参加の手続きの実際,意思確認手続きの方法,地方各地から新潟までの移送の実際などについて詳しく知ることができた。以上の研究から,帰還事業と脱北問題は,調査上,密接な関係を持たざるを得ず,また,帰還事業そのものが,「巨大な拉致」と称されることについて,帰還事業と拉致とのその構造的な類似点を確認する端緒をみることができた。また,調査対象が拉致,帰還事業,脱北は重なることが多く,北朝鮮人権法が制定する「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題」について,今後,総合的な検証と,国際社会に働きかける理念形成が必要であるとの見地に至った。 以上の研究から,帰還事業と脱北問題は,調査上,密接な関係を持たざるを得ず,また,帰還事業そのものが,「巨大な拉致」と称されることについて,帰還事業と拉致とのその構造的な類似点を確認する端緒をみることができた。また,調査対象が拉致,帰還事業,脱北は重なることが多く,北朝鮮人権法が制定する「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題」について,今後,総合的な検証と,国際社会に働きかける理念形成が必要であるとの見地に至った。
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