初年度である平成19年度においては、戦後の日米関係のレビューを行い、そのなかで米国におけるホワイトハウス、特に国家安全保障会議(NSC)の役目を調べていった。トルーマン政権において国務・陸軍・海軍による三省委員会が発展解消する形で、国家安全保障会議が創設された。国家安全保障会議は対日占領政策でも重要な政策を立案作成した。例えば、日本の非軍事化、非産業化から、軍事化と産業化を促す「逆コース」を決めたのもNSC13/2という文書だった。また、NSC68という文書は、ソ連の意図よりも軍事能力の評価に重点を置き、いかなる地域でも軍事力を行使してソ連の膨張主義を封じる決意があることを示すべきだとする米国の封じ込め政策で新展開を示した。 アイゼンハワー政権になるとさらに国家安全保障会議が活用されるようになる。アイゼンハワー大統領は大統領補佐官職を新設し、機構も文書草案を担当する企画委員会と関係省庁との政策調整を行う活動調整部を改革した。アイゼンハワーはほぼ毎週のように国家安全保障会議を開催し、自らが主宰したものも300回を超えるという。アイゼンハワー政権下で、国家安全保障会議は重要な国家安全保障政策を毎年策定した。NSC162/2文書では、ニュールック政策という、封じ込め政策の見直しを行った。 初年度の研究の成果の一つが、昨年9月に千倉書房から刊行された『日米同盟というリアリズム』である。同書は戦後の日米関係史を占領期、55年体制下、冷戦後と時系列的に扱い、国際政治理論のリアリズムとリベラリズムの相克という点から分析したもので朝日新聞等の書評欄でも取り上げられた。
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