二年目である平成20年度には、アメリカの外交政策について調べていった。アメリカ外交の歴史を追い、そのなかで大統領の役割とホワイトハウスの機能について歴史的に調べた。アメリカ外交の制作過程においては、大統領の影響力は絶大であるのは建国の当時から一貫している。たとえば、アメリカが長い間孤立主義を続けたのは、初代大統領であるワシントンがヨーロッパの争いに国が巻き込まれるのを避けようとしたからであり、それがアメリカが同盟関係を長く避けた大きな要因である。また、アメリカ外交の理念である現実主義や理想主義は、それぞれセオドア・ルーズベルトとウッドロー・ウィルソン両大統領の個人的な意思や考え方を強く反映したものである。 しかし、戦後になると国家安全保障会議が創設され、大統領個人だけではなくホワイトハウスが組織的に外交政策決定に関与するようになる。アメリカが国際社会で重要な地位を占め、またその影響力も広範な範囲にわたるようになったため、一個人だけで対応することが非現実的になったのである。 第二年度の研究成果は研究代表者が編者を務める、今年ミネルヴァ書房から出版予定の「アメリカ外交政策(課題)」のアメリカ外交史に関する第一、第二章、それと大統領と外交に関する第三章にまとめられた。そのほか、日本の外交政策決定過程については、「対外政策決定-小泉外交における政治過程」という論文が『日本の国際政治学1学としての国際政治(有斐閣、2008年)』に掲載された。
|