研究概要 |
本年度は、本研究の理論的中心となるガバナンス概念および実証的アプローチの基礎となる新機能主義について理論的考察を進めた。その上で、北東アジアにおける地域協力に適用するにあたっての具体的な分析枠組みの構築に努めた。, ガバナンス、新機能主義ともに欧州における地域主義の進展を説明する概念として発展したものであり、地域統合・協力を進展していく上で多くの示唆を与えてくれる。すなわち、ガバナンスの概念は、グローバル化した世界での非国家主体の関与の重要性を、新機能主義の概念は、相互依存の進展が共通利益の拡大と政治的対立克服の可能性を示唆する。同時に、両概念の歴史的発展や理論的意義について検討を深めていくにつれ、北東アジアの地域協力に適用するにあたっては、本地域の特性を勘案することが重要であることを認識するようになった。すなわち、地域協力を推進するにあたっての国家の中心性、国家と緊密な関係にあるビジネスの実質的関与、地域協力を社会化プロセスと捉えた場合の地域的特質などを変数として考察することで、北東アジアにおける機能的協力の実態をより的確に把握できるのではと思料するに至った。こうした考察をさらに深めるべく、年度後半に欧米の大学に客員研究員として籍をおき理論的研究を深めるとともに、同じ分野での研究を進めている内外の研究者との意見交換を積極的に進めた。 なお、本年度の研究成果として、日本の情報通信分野での対外政策と地域主義に関わる英語論文を米国の学術誌に刊行した。
|