研究概要 |
本年度は主に理論的研究を行い、主にモデルの構築およびそれに関する理論的研究を行った。研究協力者であるコンスタンツ大学のウルシュプルング教授とインターネットによる意見交換や議論を行った。理論的研究のためのモデル構築は以下の手順に従って行われた。まず、画家の死はポワソン過程に従って起こると仮定する。画家は、美術市揚において彼が制作して供給する芸術作品に関して独占企業の地位にあると想定した。さらに、美術品は一度生産されて所有されると、その美術品の所有者に対して長期間にわたり便益をもたらすと考える。したがって、美術品は耐久消費財の一種であると考えられる。コースの論文以後に発展した耐久消費財を供給する独占企業に関する研究は、Stokey(1981)、Bond and Samuelson(1984,1987)、Karp,L.(1996)、Kahn(1986)およびDriskill(1997)などの研究などを参考にして、耐久消費財の独占企業のモデルをベースにして画家の美術品の動学的な供給行動モデルを構築して、主に均衡の比較動学分析を行った。特に画家の突然の死あるいは予想された死のいずれもが、彼の芸術作品か市場価格の上方ジャンプを引き起こすことを理論的に示すことができた。 今年度の研究結果は、現時点では、ドイツのミュンヘン大学Ifo経済研究所のディスカッションペーパという形でまとめられている(CESifo Working Paper Series 2213)。なお、このディスカッションペーパは研究協力者であるコンスタンツ大学のウルシュプルング教授との共同論文になっている。
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