マッチング・モデルの貨幣的均衡集合の位相構造を明らかにした。具体的には、貨幣的均衡集合の次元が一般的に1以上であることはKamiya and Shimizu(2006)で明らかになったところであるが、これは局所的な性質を示したものであり大域的な性質は明らかでなかった。今年度は、この集合の大域的構造を明らかにした。正則性がある場合には特殊な構造を持つ1次元1のpiecewise smoothな多様体になる。また、正則性がない場合には特殊な構造を持つalgebraic varietyになる例も示した。また、これまでに知られているほとんどすべてのランダム・マッチングモデルを統合するモデルを提示し、一般的な定常均衡の均衡存在定理を与えた。また、いくつかの動学的貨幣モデルを分析することにより、制度がいかに均衡の性質に影響するかを分析した。たとえば取引方法としては、ワルラスのオークショニアーによる価格調整を通じて需給一致価格を見出しその価格で取引をするというモデルが経済学では一般的である。しかし、現実にはワルラスのオークショニアーによる取引が行われることはほとんどなく、相対交渉による取引、ダブル・オークション、ファーストプライス・オークション、イングリッシュ・オークションなどが現実経済での取引方法になっている。本研究では、貨幣経済モデルにおいて、取引方法の違いにより均衡にいかなる差が生じるかを、特に非決定性に注目して分析した。さらに、貨幣的モデルにおいて連続無限個の均衡サイクルが出現する例を提示した。また、均衡サイクルが出現する論理をある程度まで分析した。
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