研究概要 |
本研究では,2国国際金融モデルを活用しながら,双方向の資金循環が生じるような状況を考察するとともに,その資金循環が資源やリスクの配分にもたらす効果を分析している。特に,相手国に対する債権と債務から成る両建ての対外ポートフォリオ,すなわち,レバレッジをかけて資産を構築するポートフォリオが持つ経済学的な効果を明らかにしている。 平成19年度は,国際間の資金貸借において,国際間で取引されている金融資産(国際的流動性)が担保として必要となってくる場合に,自然災害や疫病,あるいは,テロなどのカタストロフィックなリスクが国際間でどこまでリスクシェアリングできるのかを理論的に分析してきた。そこで得られた主要な結果は,担保制約があるにもかかわらず,2国間で双方向の活発な資金取引を行うことによって,両国のバランスシートが拡大するとともに,担保にできる国際的流動性が内生的に拡大し,カタストロフィックリスクを円滑にシェアリングできることを明らかにしている。 通常,カタストロフィックリスクが顕在化すると,その国に対して国際的な機関が一方的に流動性を供与するような政策措置が検討されるが,ここでの分析結果によると,たとえ国際金融市場が担保制約に直面していても,そのような一方的な流動性供与はかならずしも必要とせず,2国間の自発的な金融取引によって貸借に必要となる国際的流動性が十分な規模で内生的に生じる。 なお,この理論研究に関連した書籍・論文は,2007年度日本経済学会石川賞,2008年毎日新聞社エコノミスト賞を受けている。
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