研究概要 |
本研究では,2国国際金融モデルを活用しながら,双方向の資金循環が生じるような状況を考察するとともに,その資金循環が資源やリスクの配分にもたらす効果を分析している。特に,相手国に対する債権と債務から成る両建ての対外ポートフォリオ,すなわち,レバレッジをかけて資産を構築するポートフォリオが持つ経済学的な効果を明らかにしている。 平成21年度に引き続き平成22年度も国際間の資金貸借において,国際間で取引されている金融資産(国際的流動性)が担保として必要となってくる場合に,自然災害や疫病,あるいは,テロなどのカタストロフィックなリスクが国際間でどこまでリスクシェアリングできるのかを理論的に分析してきた。そこで得られた主要な結果は,担保制約があるにもかかわらず,2国間で双方向の活発な資金取引を行うことによって,両国のバランスシートが拡大するとともに,担保にできる国際的流動性が内生的に拡大し,カタストロフィックリスクを円滑にシェアリングできることを明らかにしている。 平成22年度は、経済主体にとってカタストロフィックなショックに関する国際間リスクシェアリングの研究について、引き続き実証、理論面での業績をあげた。特に、前年度までにあげてきた学術的な研究成果を、2008年9月のリーマンショック以降の日本、米国、欧州の国際資金循環について応用し、為替相場や各国のマクロ経済に与える影響を分析した。これらの分析結果については、一般向けの論文や書籍でも紹介し、研究の社会発信にも努めてきた。
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