本研究甲請前の研究の成果が結実したものではあるが、本研究を遂行する上で基礎となるような研究論文がJournal of Public Economic Theory(以下JPETと略記)及びJournal of Economic Dynamics and Control(以下JEDCと略記)の2008年4月号に掲載予定である。JEDC掲載予定の論文は奥口孝二先生との共同論文であるが、平成19年度の研究成果にあるEARIE学会で私(山崎剛志)、がその研究成果を報告した。JPET論文は本研究の基礎モデルをなすレント・シーキングモデルをより一般化した非対称的なコンテストモデルにおける純戦略ナッシュ均衡の存在と一意性を証明したものである。非対称的なコンテストモデルはレント・シーキングあるいはコンテストのゲームに参加する経済主体の異質性を十分に考慮したものである。レント・シーキングモデルではレントあるいは褒章を得る確率はロビー活動等のレント・シーキングに費やした努力(金銭的なものばかりとは限らない)に依存している。JPET論文ではこの確率的な依存関係に微分可能性を仮定することなく、純戦略ナッシュ均衡の存在と一意性を証明している。典型的なレント・シーキングモデルはクールノー寡占モデルと解釈することも可能だが、JEDC論文はレント・シーキングモデルとクールノー寡占モデルのナッシュ均衡の大域的安定性を研究したものである。典型的なレント・シーキングモデルでは、レント・シーキングゲームに参加する経済主体の数が4より小さいか等しい場合にはGradient Dynamicsと呼ばれる連続的な調整過程の下で大域的に安定であることを示した。上記2論文と密接に関連した本研究課題の研究論文はPublic Choice等の国際雑誌に投稿中である。
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