本研究申請前の研究の成果が結実したものではあるが、本研究を遂行する上で基礎となるような三つの研究論文がJournal of Public Economic Theory (以下JPETと略記) 及びJournal of Economic Dynamics and Control (以下JEDCと略記) の2008年4月号に掲載され、Public Choiceに掲載予定である。JEDC掲載予定の論文は奥口孝二先生との共同論文であるが、その論文はレント・シーキング・ゲームのナッシュ均衡の大域的安定性を分析したものである。JPET論文は本研究の基礎モデルをなすレント・シーキング・ゲームをより一般化した非対称的なコンテスト・モデルにおける純戦略ナッシュ均衡の存在と一意性を証明したものである。非対称的なコンテスト・モデルはレント・シーキングあるいはコンテストのゲームに参加する経済主体の異質性を十分に考慮したものである。基礎的なレント・シーキング・ゲームでは全てのプレイヤーは危険中立的と仮定される。Public Choice掲載予定の論文ではレント・シーキング・ゲームに危険回避的なプレイヤーが存在する一般的なモデルにおけるナッシュ均衡の存在と一意性を証明した。本研究課題が準拠する最も基本的なモデルを提示する論文をフランスで開催されたEARIE学会で報告した。その論文では高関税 (あるいは関税導入) を支持するグループのメンバーが増えたときに関税率が高くなる確率がどのように変化するか分析した。低関税 (あるいは関税導入反対) を支持するグループのメンバー数増加の影響も同様に分析した。先行研究ではメンバー数増加はそのグループに不利になることが示されているが、外国企業と自国企業の異質性を導入することにより、メンバー数増加はそのグループに有利となる可能性もあることを示せた。
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