研究課題
今年度の研究では、人々がstatus-seekingをする場合に、今までの研究結果がどのような影響を受けるかを分析した。消費者の意思決定におけるstatus-seekingの役割は18世紀のAdam Smithや19世紀のThorstein Veblenによる分析にまでさかのぼることができるが、戦後も多くの研究者の関心を引いてきた。厚生分析の観点からすると、status-seekingは、それがない場合に比べて個人や国全体の厚生水凖を引き下げるであろうと予想されるが、われわれは資源経済の持続可能性を分析対象としているため、資源の活用の仕方がstatus-seekingによってどのような影響を受けるかを分析した。天然資源と人為的に蓄積可能な物的資本を用いて財を生産し、その一部を消費し、残りを物的資本を蓄積するための投資に回す経済を考える。今回は、資源と資本の両方とも住民の共有資産と考えた。個々の住民の効用水準は、自分自身の消費量とともに他の人々の平均消費量および資源を採掘するために必要な労働量に依存する。効用関数に他人の消費量を入れることでstatus-seekingが表されている。住民がそれぞれ他人の消費および資源採掘戦略を所与として自己の効用を最大化すると考えた場合の均衡状態では、消費/資本比率は社会的に望ましい比率より高くなりかつ、status-seekingの程度が高くなればなるほど比率は上昇することがわかった。ところが、資源採掘に要する労働量がゼロでない限り、資源採掘量/資源ストック量比率は社会的最適比率より低くなる。これは-見すると予想外の結果であるが、資源や資本は公共財として自己の生産活動を有利にしてくれるため、資源採掘に労働投入が伴う限り、なるべく他人の労働投入に依存しようとするfree-ridingが起こるものと解釈すれば正当な結論といえよう。
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Optimal Control Applications and Methods published online, Feb. 16
ページ: DOI:10.1002/oca. 877