研究概要 |
本年度は,シミュレーションモデルの改良をおこない,その結果ある程度良好な結果が得られたので学会報告をし,論文としてまとめた。 モデルの改良にあたっては,当初の計画では学生を使った実験によって蓄積された知見を踏まえておこなう予定であったが,実験の設計や準備などに相当な時間と手間のかかることが判明したため,計画を大幅に変更し,まったく別のアプローチを取ることにした。おもな改良点は以下の通りである。 (1)同質的な消費者からなる集団を想定し,統計物理学の手法を用いて集団的行動を定式化した。 (2)限定合理的な企業の行動については,強化学習アルゴリズムを用いて従来の定式化を深めた。 改良の結果,消費者のgreediness(より高い効用をどれだけ熱心に追い求めるか)を表すパラメータの値に応じて,平和共存的な均等シェア状態,寡占バトル状態,戦国時代的独占状態という3つの相が出現し,平均的効用が最大になるgreedinessの値が存在し,その値のもとでは市場は寡占になること,寡占状態においてはZipf則およびGibrat則が成り立つことが明らかとなった。
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