研究課題/領域番号 |
19530157
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
瀬古 美喜 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60120490)
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研究分担者 |
黒田 達朗 名古屋大学, 環境学科研究科, 教授 (00183319)
隅田 和人 金沢星稜大学, 経済学部, 講師 (10350745)
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キーワード | パネルデータ / 住宅ローン対住宅価格比率 / ハザード・モデル / 転居 / 借地借家法 / 定期借家 / 条件付ロジトモデル / 補償変分 |
研究概要 |
まず慶應義塾家計パネル調査に基づき、日本の住宅市場に特有な2つの政策の転居に対する影響を分析した。第1の政策は、2004年に導入された持ち家の譲渡損失繰越控除制度である。第2は借家市場に関連する借地借家法である。前者はバブル後の住宅下落により生じた深刻な資産価値下落に対応するためであり、後者の借地家法は、借家人を保護する役割を果たしてきた。これらの政策が転居に対して、どのような影響を及ぼしてきたかをバザード・モデルにより分析した。分析の結果、持ち家の譲渡損失繰越控除制度は、特に負の住宅資産価値を有するLTV(=住宅ローン/住宅価格の比率)の大きな世帯の転居を促進していた。また借地借家法は、暗黙の補助額により借家からの転居の機会費用を上昇させ、借家人の転居を阻害していたことが示唆された。 さらに、2000年3月の借地借家法の見直しにより、新たな居住形態として導入された定期借家を含む三つの居住形態、すなわち持ち家、一般借家、定期借家に対する家計の選択を条件付きロジットモデルを用いて分析し、経済厚生の指標として補償変分析を求めることにより、この新たな借家が市場ではどう評価されているのかを検討した。分析の結果、定期借家を選択する世帯、地域住宅市場の外から転居してきた世帯、世帯主が独身者の世帯、近い将来に持ち家を購入する予定のある世帯である。定期借家の導入により定期借家居住世帯にもたらされた補償変分(月額)の平均値は、1,205円であり、彼らの家賃(月額)の約1.96%に当っていた。そして若い世帯主・低所得の家計借家の導入により、最も多くの恩恵を受けていることが明らかになった。
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