研究課題/領域番号 |
19530157
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
瀬古 美喜 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60120490)
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研究分担者 |
黒田 達朗 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00183319)
隅田 和人 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (10350745)
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キーワード | パネルデータ / 住宅ローン対住宅価格比率 / ハザード・モデル / 転居 / 借地借家法 / 定期借家 / 条件付ジットモデル / 地震保険 |
研究概要 |
A)研究計画で述べている個票を用いたミクロ的な計量経済分析の共同研究を行っている。 (1)日本の住宅市場における転居がどのような要因により決定されるのかという問題意識に基づき、慶応義塾家計パネル調査(Keio Household Panel Survey: KHPS)を使用した研究を継続している。2007年に発表した論文を基に、修正・加筆した論文を「我が国の住替えに関する制度・政策の影響」というタイトルで『住宅土地経済』に掲載した。また、過去のデータセットに新たに調査されたKHPS2008年調査の結果を接続し、住宅税制の変更が、居住形態と転居に与える影響を説明するモデルの推定作業も行った。譲渡損失繰越控除制度は、持家から持ち家への転居を促していることが示された。この結果を2009年1月にAREUEA annual conferenceで発表した。 (2)前述のKHPSを用いた一般借家と定期借家の家賃水準の比較分析を行った。定期借家は、借家人の居住期間が契約時に決定されているため、一般借家の家賃の期間構造と異なる。これらの2つの借家の家賃に関する期間構造を比較した。これより定期借家市場は、短期的には需要の伸びは大きくないが、徐々に需要が増加し、供給も増加する傾向にあることを示した。この結果を2008年7月のAsian Real Estate Societyと、11月の応用地域学会で報告した。 (3)地震保険があまり購入されないのは、なぜかという問題意識を基に、KHPSを使用して地震保険の購入の有無を計量経済学的に分析している。地震発生確率の高い地域の保険料と、低い地域の保険料が4段階に別れているに過ぎず、それほど変わらないために、保険料の低い地域の加入者のグループが、保険料の高い地域の加入者のグループを内部補助していることが、地震保険率の低加入の原因なのではないかと考察した。この結果を2008年7月に17^<th>Annual AREUEA International Conferenceで報告した。 B)新経済地理の分野においても、輸送費の低減に伴い、クルーグマン(1991)のモデルによれば集中が進むのに対し、移動できない労働者を考慮しないヘルプマン(1998)のモデルによればむしろ分散が進むというように、想定する条件によって相反する結果が得られている。そこで、本年度はヘルプマンのモデルの拡張として、家計の公共財に対する選好の違いが入口の集中・分散に与える影響を分析した。これにより、家計の公共財に対する選好が一様分布で各地域の政府がそれぞれの住民の中位の選好に基づいた厚生最大化の税率の決定およびその税収による公共財の提供を行った場合、ヘルプマンとは逆に、クルーグマンの結果と同様になることを示した。
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