本年度は以下の研究を行った。(1)Weitzman多様性関数を多様性の過小評価値として用いる可能性の検討。(2)生物多様性の評価に関する調査。(3)新しい多様性関数へのアプローチの検討。 (1)Weitzmanのアプローチは実用性に優れる一方、生物多様性の価値の限られた部分のみを表現しているにすぎない。一方、Nehring-Puppeの属性アプローチは、包括的な価値を表現できるが、選択可能な関数型は極めて広範にわたり、その特定化、意味づけが困難である。生物多様性保全の費用便益分析の遂行という実用的な要請を考えると、Weitzman多様性関数が価値を過小評価していると見なせる条件を見つけ、それとセットでその多様性関数を使うという方法が有望である。Weitzman多様性関数はNehring-Puppeのアプローチでは属性がNesting Propertyをもつことと同値である。そこで多様性を評価する任意のA個の属性に対して、最低いくつの属性を無視すれば、Nesting Propertyが得られるかを検討した。属性を無視することで過小評価性は保証される。残念ながら属性がA個ならば無視すべき属性はA-2個必要であることがわかった。またWeitzmanアプローチの多様性の値がNehring-Puppeのそれ以上となる数値例も作成した。 (2)熱帯雨林の植物に対してその愛好家が抱く多様性の価値を調査した。実態として、現存する(あるいは絶滅した)任意の2種の間に何か違いがあれば、それが多様性の価僅を生み出す。したがって現存するn種に対して潜在的にA=2^-n以上の属性があると考えられる。 (3)審美的な価値に基づいて多様性関数を構成することは、(1)、(2)の結果から、かなり困難といわざるを得ない。そこで、生態学的機能の観点から多様性関数を構成することを現在模索している。
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