本年度は、3年間にわたる研究の初年度として、(1)研究遂行上の基盤整備および(2)理論面での予備的考察および予備的な定理や補助定理等の証明等を行った。 (1)については、膨大な計算が必要である投票力指数を求めるためコンピュータ環境を整備し、さらに研究に必要な情報や文献等の収集を行った。 (2)については、まず拒否権を伴う重み付き投票ゲームにおける投票力指数の計算のための予備定理として、拒否権付きゲームを拒否権無しのゲームに変換するための方法を確立した。これによって、さまざまな投票力指数に関して拒否権付きゲームの指数を求めるためのアルゴリズムの確立が容易になり、さらにこの定理から、企業の乗っ取り防衛策として考えたときに拒否権付き株式(いわゆる黄金株)の発行と特定の株主への増資のいずれが株主の権利配分により否定的な影響を与えるのかについての研究の基礎が得られた。なお、本年度は指導する学生の協力を得て、代表的投票力指数であるシャプレイ=シュービック指数(SS指数)について、拒否権の導入がもたらす権利配分への影響に関するシミュレーションを行い、その結果から今後の研究においてどのような一般的な定理が確立できるのかについての重大な示唆を得られた。 次に単峰的選好を伴う経済環境における資源配分メカニズムの設計に関して、効率的かつ公平な資源配分をすべて求めるための方法を確立することができた。この方法は、広い意味でのアルゴリズムとしての役割を果たすとともに、資源配分メカニズムとしても機能するので、このメカニズムの誘因上の特徴等を研究するための基礎付けが確立したことになる。
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