本年度はプロジェクトの2年目であり、投票力指数の研究に関しては去年に引き続いて主に理論的な研究を行った。単調な単純ゲームとその重み付き加重ゲーム表現との幾何学的関係について研究し、さらに過半数で可決される投票ゲームに拒否権者が生じた場合、拒否権者以外のシャプレイ=シュービック指数とバンザフ指数が拒否権がない場合の2分の1になることを理論的に説明するため、投票ゲームの双対ゲームの構造を研究した。 資源配分メカニズムの設計およびそれに関連する研究では、単峰的選好を持つ1財モデルにおいてすべての効率的かつ無羨望(公平)な配分を求める方法を開発した。主定理ではある添数集合上で定義されたアルゴリズムの族が存在し、任意の効率的かつ無羨望な配分に対して、適当な添数を選ぶと、その添数が付けられたアルゴリズムは必ずその配分に到達することが示されている。この研究は当該環境における効率的かつ無羨望な配分の構造を調べるために有益な情報を提供するものと思われる。なお、共著者の阿武秀和がこの研究をカナダで開催された9th International Meeting of the Society for Social Choice and Welfareで発表した。また、資源配分問題の基礎にある選好の構造を明らかにするために、選択者が選択結果のみならず選択肢の集合をも評価の対象とするように選好の概念を一般化し、そのような選好について効用関数の存在および効用表現を特定化する諸公理を明らかにした。本研究は佐藤歩との共同論文として『産業経営』誌に掲載された。
|